「森に還る」
つきだて花工房は間もなくオープン20周年を迎えます。
これを記念して、俳優・ナレーターとして活躍している柳生博さんを迎えて、講演会を開催しました。
柳生さんと言えば、八ヶ岳に居を構えて、森とともに暮らしていらっしゃいます。
今回の講演会は「森に還る」というタイトルにしました。
この「還る」にいくつかの意味を込めました。
生活様式の変化、特に原発事故以降は山の恵みをいただくことさえ禁じられてしまいました。
かつては薪炭としてエネルギーを得たり、きのこ栽培に使う原木や肥料としての落ち葉を得たりする場所であった森、里山。
本当の意味の自然のエリアだった「森」と人の生活テリトリー、そしてその間にある「里山」。
顧みられなくなった里山は森に還りつつあり、結果的に自然(野生)のエリアと人間のテリトリーが密着することで、野生動物との接触機会が格段に増えていると感じます。
我々人間が里山に「還る」ことが、人間と野生動物、双方のために必要と感じます。
柳生さんは講演の中で、「道ばたのつる性植物(フジ、クズ等)をもっと切ろう」と提案されました。
もうひとつは魂の行く先について。
日本は本来、多神教です。
身の回りにたくさんの神様がいらっしゃいます。
その中でも山の神、田の神。
亡くなった人の魂は近くの山に飛んで行き、そこで山の神となります。
山の神は春になると田の神となり、里に下りてきます。
また多くの神は自然の現象ひとつひとつであり、どんなに科学が発達しても、人間が御することはできません。
そんな自然への敬意、畏れ。
傲慢にならないように。
そういうことも、子供たちには引き継いでいきたい。
いつもは1000人、あるいはそれに近い会場で講演会をされている柳生さんは今回、200人程度の、観客と直接話ができるほどの大きさの会場で、ときには来場者との会話を楽しみながらお話しされました。
会場からの質問で「これからなにがやりたいですか?」との声に、柳生さんはこう応えました。
「何もない。僕は自分のためにやりたいことはもう何もありません。ただ、子供たちのために、森をよくしていきたいです」